白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私は救いを求めるかのように、先生を見つめた。

「ですが、命には代えられません。皆、そこは折り合いをつけて、手術を受けます。」

ハッとした。

「諦めろって言うの!」

「生き延びる事が、最優先です。」

私は思わず先生を、両手で叩いた。

「出てってよ。」

「天音さん。」

先生は女の力じゃ、びくともしない。

「出てってよ!先生なんか嫌い!」

私ははぁはぁっと息を荒くした。

「嫌いでも構いません。あなたの命を救うのが、俺の使命です。」

私は最後に、先生のお腹を思いっきり殴った。

「うぅ……」

先生はお腹を押さえて、前のめりになっている。

でも痛いとも言わないし、私を責める事もしない。

それは私が患者だから?

「とにかく出て行って!もう来なくていいから!」

すると先生は、お腹を押さえながらこう告げた。

「明日……また来ます。」

そう言って、ゆっくりと病室を出て行った。

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