白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「俺は……美玖を自分の欲望で抱いたんじゃない。」

「悠真先生……」

美玖の声が聞こえる。

「美玖は、俺に愛が欲しいと言った。他の誰でもない、俺の愛が欲しいと。副院長は愛している人にそんな事を言われたら、黙って我慢することはできますか?」

「それは……」

副院長も院長も困っている。

「俺は……恋愛を知らないで死にたくないと言った美玖に、生きる希望を与えたかった。そこに、自分の欲望なんてなかった。ただただ、俺と一緒に生きる勇気を与えたかった。」

俺は今、はっきりと言える。

「医師としては、間違った行為だったかもしれません。でも、一人の男としては、彼女を抱いた事間違ってなんかいません。」

その瞬間、カンファレンスルームの空気が、スーッと冷めた。
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