白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私はそっとため息をついた。

そして坂井先生は、時間を気にするようになった。

「今日は彼氏さん、迎えに来ないの?」

時計を見ながら、坂井先生は私の顔を覗き込んだ。

「仕事で遅くなるみたいで。」

「へえ。彼氏さん、何の仕事してるの?」

私は一瞬、言おうか迷ったけど、坂井先生なら受け流して貰えると思った。

「……医師です。」

「医者!あの感じ、やっぱりだ。」

坂井先生は私の電子ピアノを聞きながら、一音一音を確かめてくれる。

「何科なの?」

「脳……外科です。」

坂井先生のペンを持つ手が、一瞬止まった。

「もしかして、美玖ちゃんの担当医だった人?」

「……そうです。」

もう隠す事なんてない。私はもう悠真先生の患者じゃないのだから。
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