白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
相変わらずこういう時は、返事がない。

それは彼の優しさであり、残酷さだ。

彼は私の担当医師であって、恋人ではない。

「ごめんなさい。変な事言って。」

「いや、いいんだ。」

そう言うと渡部先生の手が離れた。

私の手が、空にさ迷う。

「渡部先生。天音さん、バイタル安定してきました。」

「よかった。」

先生は私の顔を覗き込むと、瞳を見つめた。

「手術、早く決断した方がいいね。」

まるで死神のようだった。

私の人生を奪っていく、死神。

私は何もかも忘れたくて、目を閉じた。

その時、そっと温かい手が私の手を握った。

「渡部先生?」

看護師さんの声が聞こえる。

「しばらく様子を見てから行きます。」

看護師は何も言わずに、救急カート押していく音がした。

ウトウトしている間も、彼に見られている気がした。

ずっと私の手を握ってくれている。

何も言わない。でも視線だけが私を優しく見守ってくれている。
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