白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「朝ごはん食べたら、家まで送って行くよ。」

起き上がると、俺はTシャツを着た。

キッチンに行って冷蔵庫を見ると、何もない。

一人暮らしの食生活。どうなってんだ?

俺は冷凍庫を見る。そこだけは、満杯になっている。

「見事に、冷凍食品ばっかりだね。」

美玖が後ろから覗き込む。

「ごめん。今度は何か買っておくから。」

冷凍庫からパスタを取り出すと、電子レンジでチンをした。

「わーい。パスタだ。」

それでも美玖は、嬉しがって食べてくれた。

そんな彼女が、ふと手を止めてリビングから見える大きな窓から、外を見た。

「……何でも経験してみることね。」

「どうした?急に。」

「ううん。私今まで、自分の部屋から見る朝の光景しか、知らなかった。」
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