白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
思ったよりも厳しい意見に、一瞬たじろぐ。

そこに美玖のお母さんがやってきた。

「お父さん、玄関で騒ぐのは止めて下さい。」

お父さんの背中を叩いて、お母さんがリビング連れて行こうとする。

「美玖。悠真先生を見送って。」

「はい。悠真さん、行こう。」

だが俺は、動こうとしなかった。

「失礼ですが、お邪魔しても大丈夫ですか?」

尋ねるとお母さんが、ううんと首を横に振った。

「また殴られるわよ。」

「構いません。美玖さんとの交際の許可を得たいんです。」

そう言うとお母さんは、俺にスリッパを差し出した。

「悠真さん……」

美玖が俺の手を握る。

「大丈夫だから。心配しないで。」

俺はジャケットの襟を直すと、靴を脱いでスリッパに履き返した。
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