白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
学会でもない限り、しない格好。

でも、今日は美玖のコンサートの為に、用意してきた。

「ふふふ。ネクタイ姿もカッコいいわよ。」

「ありがとう、美玖。」

そして俺は、手元から小さなブーケを差し出した。

「えっ?なに?」

美玖が驚く。

「記念に、売店で買ってきた。」

美玖はそのブーケを手に取ると、柔らかい笑顔で受け取ってくれた。

「あの時と同じ花ね。」

「……覚えてくれてた?」

「忘れないわ。だって、悠真さんが初めてくれたお花だもの。」

その美玖の笑顔が、俺の目の前に咲いた時、無性に彼女の人生を手に入れたかった。

ああ、プロポーズしたい。

今、ここで。彼女と共に歩む人生を決めたい。

「悠真さん?」

俺は美玖の手を取ると、彼女の前に片膝を着いた。
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