白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「誓います、全身全霊で悠真さんを愛します。」

美玖が俺を見た時、お父さんが泣く声が聞こえた。

何も声をあげて泣かなくたって。

「では、指輪の交換です。」

目の前に、俺達の結婚指輪が差し出された。

新婦の指輪を取ると、俺は美玖の左手の薬指にそれをはめた。

そして美玖が新郎の指輪を手に取ると、その指が震えた。

俺の左手を掴む手が、微かに揺れる。

俺はたまらずに、美玖の指を握った。

「ゆっくりでいい。」

美玖の指は、俺が守る。

ピアニストとしても、一人の女性としても。

美玖が生きている限り、この指を守った事。

俺は忘れない。

「ゆっくり、二人で歩いて行こう。」

美玖の指で指輪が、俺の左手にはめられる。

「誓いのキスです。」

そう言われお互いの唇を重ねると、美玖の頬に涙が伝った。
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