白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
なんて温かいのだろう。彼女の音は。

その瞬間、彼女の左手が止まった。

「どうしました?」

彼女は思い詰めた顔をしている。

「左手の感覚が……鈍くて……」

「どんな感じ? しびれてる? 力が入らない?」

そう言いながら、俺は彼女の左手にそっと触れた。

指先を軽く押したり、冷たいペンライトを当てて感覚を確認する。

「今、触れてるの分かる?」

彼女は、小さくしか頷かない。

確実に鈍っている。指の反応が。

「天音さん、俺を見て。笑ってみて。」

俺の指示に、彼女が微笑もうとする。

見ると、少し左の口角が下がっている。

「……くちびる、重い……?」

「大丈夫、俺がいる。もう喋らなくていい。」

俺は立ち上がると、ナースコールを押した。

「渡部です。点滴用意してください。」

そしてもう一度、彼女を見る。

「今、点滴用意しますから。大丈夫ですよ。」
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