白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
そして病室を出た後、ナースステーションに戻った。

この日は、定時上がりでもう帰らなければならなかった。

「お疲れ様でした。」

俺は天音さんの手術同意書を、彼女のカルテに差し込むと周りにそう言った。

一緒に定時上がりの篠田先生が、俺のところにやってくる。

「天音さんの手術同意書、まだなんですね。」

1階にあるロッカー室まで歩きながら、篠田先生と話をする。

「こればかりは、本人が同意しないと手術できない。」

「もう強制的に、書かせるのもありなのでは?」

俺は階段の踊り場で、歩みを止めた。

「……それはできません。」

「どうして?」

「彼女、指が動かなくなるのを恐れている。」

そうだ。俺は無理に、彼女の人生を奪いたいわけじゃない。

でも、命の危険は一刻とずつ迫っている。

何よりも小さな発作が繰り返し起こっているのは、病状が進んでいる証拠だ。
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