白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
俺と篠田先生は、非常口階段のドアを開けて、近くにあるロッカー室へと足を運んだ。

医師はここで私服に着替えて、裏口から帰る。

「でも、渡部先生なら後遺症も少ないでしょう。」

「果たしてそうでしょうか。」

「今は、ロボティクアームもありますし、成功する確率は格段に上がっています。」

俺は自分のロッカーを開けると、手を止めた。

「……ロボティクアームって、確かシミュレーションがありましたよね。」

「ああ、ダヴィンチのですか。ええ。この病院にありますよ。」

それを聞いて、俺はロッカーのドアを閉めた。

「ちょっと、練習してから帰ります。」

そう言うと俺は篠田先生に背中を向け、再びロッカー室を出た。

助けたい。彼女のピアニストとしての人生を、なかった事にしたくない。

俺はその一心で、また非常口階段を上り始めた。

3階、オペ室3。

通称「ダヴィンチルーム」
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