白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「アダージョ。イタリア語でゆるやかにとか、穏やかにって言う意味よ。」

でも先生の鼓動は、もっと早いみたい。

「ふふふ。」

「なに?可笑しい?」

「だって、先生の心臓の鼓動。まるでモデラートみたい。」

「モデラート?」

先生は私の顔を覗き込む。

「中くらいの速さ。イタリア語で穏やかに。テンポはおよそ 96〜108拍ってところかな。」

すると先生は、近くにあった小さな機械を指につけた。

「それ、脈拍測るやつ?」

「パルスオキシメーターね。」

数字が出ると、先生は驚いていた。

「本当だ。脈拍102だって。正常範囲内での興奮って言った感じかな。」

私はあははと笑った。

何でも音楽に例える私と、同じように何でも医療で考える先生。

「私達、似ているのね。」

その時、ドキッとした。先生が私を見つめていたから。

「私の体、おかしい?」
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