白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「私、弾かなきゃいけないんです。」

「だったら、ご飯を食べてからにしましょうね。」

看護師さんはそう言うと、USBの線を抜いた。

音は鳴らない。

でも、弾き続けなければならない。

「天音さん。あまりにも酷いと、担当医師に注意してもらいますよ。」

「どうぞ、ご勝手に。」

看護師さんが病室を出て行って、数分後。

渡部先生が、病室にやってきた。

先生は食事をしないで、鍵盤を弾き続ける私に驚いていた。

「美玖。何があった?」

「何も。ただ自分の仕事を思い出しただけよ。」

そう言うと先生は、私の指を握った。

「一旦、ストップ。」

私は素直に、ピアノを弾く事を止めた。

「さあ、ご飯食べて。」

私はトレーの中にある食事を、貪るようにして食べた。

食事はあっという間に無くなった。

「これで満足?」

そう言うと私はまたUSBの線を、ロールピアノに差し込んだ。
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