マモノ狩り或いは激情1
ゴングが鳴った。
目の前のアンジーに心臓が高鳴る。

アンジーも右利きなので、アップライトで向かい合う。

アンジーが動く。
ワンツー、疾い!
スリーフォーと叩き込む。
スウェーとダッキングで躱す。
すぐ様、右ロー。
被弾。
距離を取る。

太腿がじんわり痛い。
グルーに蹴られた時と違い、鋭い痛み。

しっかりした体躯である。
間近に見るアンジーの体。

体の芯にスッと落ちる。
感覚。
呼び覚させられる。
起動。

体は自然に動いていた。
距離が詰まる。

Lスマッシュ

言葉がよぎる。
左のジャブ、それはフェイント。
右のコークスクリュー、Lスマッシュ。
そう呼んでいた。

アンジーの呼び水に引っかかっていた。
タックルしてきた。
ミアが、教えただろう情報の裏をかいてきた。
見事に決まった。

拳の体が宙に浮いた。
そして、叩きつけられた。

必然、拳はガードポジションをとる。
アンジーのパウンド。
顔面を守るべく固めた両腕を躱し、左右からフックで打ち込む。

拳はこめかみを痛打して、火花が散った。火花に画像が重なる。

これは?
拳は画像を凝視する。

現世?校門?校舎?
見覚えがある!

断片が重なり合い、鮮明度を増す。
伽藍学園!?
それが母校だ!

脇腹の痛みに我に返る。
アンジーのボディへの攻撃である。
肋骨がひしゃげる音がする。

油断すると、顔面へフックが飛ぶ。
火花。フラッシュバック。

む、むてき。
無敵丸!
なんだ?

間隙を突いて、鼻っ柱にパンチを喰らった。痛い。
鼻血が出た。
鉄の味。

味と記憶がシンクロする。
蹴った、殴った。カウンター。
血の味。鉄の。

無敵丸弦尽。
僕の名前。
記憶が飛ぶ。
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