君を守る契約

プロローグ

知らない番号からの着信が何度もあった。
講義が終わったばかりの大学で不審に思いながら、再度かかってきた電話に出てみた。

浅川(あさかわ)琴音(ことね)さんですね? ご両親が事故に遭われました」

その電話は病院からのものだった。“事故“という言葉に肺の奥が凍りつく。

『今、心肺蘇生をしています。すぐに市民病院まで来てください。どんな手段でもいいので、できるだけ早くお越しください』

その言葉に手が震え始める。
心肺蘇生? そんな……。
私の狼狽える様子を見て友人が何事かと尋ねる。そして今聞いた言葉をそのまま伝えると、すぐにアプリでタクシーを呼んでくれた。
早く、と私の手を引くと校門まで連れて行ってくれる。

「琴音、しっかり! 弟さんは?」

「多分小学校から帰ってくる頃だと思う」

「だったらすぐに電話をして家で待つように言って。それから病院に駆けつけないと」

友人の里美(さとみ)が頭の働かない私に変わってどう動いたらいいのか教えてくれる。私は彼女の言う言葉に何度も頷く。

「タクシー来た。早く乗って」

私を押し込むと自宅の住所を言うように促される。そして彼女はお財布に入っていた1万円を手渡してきた。

「手持ちがこれしかないの。でもないと困るだろうから持って行って」

そういうと運転手さんに「お願いします」と手短に伝えてくれた。私は1万円札を握りしめ、声が震えながら自宅の住所を伝えた。
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