君を守る契約
彼女は食べ終わると小さな声だが手を合わせ「ごちそうさまでした」と言うのが聞こえた。その声を聞き、彼女が日々の生活を丁寧に生きているのだと胸が温かくなった。真似をするように自分も手を合わせると「ごちそうさま」と呟いた。彼女に聞こえたかはわからないが、なぜか自分もこういう丁寧な生き方をしたいと思った。
トレーを片付けると俺は再び制服の襟を整えた。午後の便の準備がある。忙しい日常に戻る前にふとガラスに映る自分の顔を見ると、なんだかいつもより表情が柔らかく見えた気がした。
胸が温かいまま午後の仕事に向かうと、なんだかいつもより心が晴れている気がした。そしてどこかいつもよりもやる気に満ち溢れているように思った。
午後の光がコックピットのガラスを照らす。スイッチバックされている間、一瞬だけゲートにいるであろう彼女のことが気になり視線を上げる。一目でいいから彼女の笑っている顔が見れたら、と思うが、彼女がそんなタイミングよくこちらを見ているなんてあるはずがない。それでもどうしても探してしまう自分がいた。
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