君を守る契約
今日も家に帰っても部屋は静まり返ったまま。あかりをつけるがなんだか寒いのは気候のせいなのか、それとも気持ちのせいなのかわからない。
はぁ、と小さなため息をつくと冷蔵庫を開け、残り物の煮物を小鉢に移す。温めた味噌汁と一緒にテーブルに置くとテレビをつける。無音の部屋にいるよりは気が紛れるかもしれないと思ったが、気休め程度にしかならなかった。
箸を持つ前につい引き出しを開けると見慣れた通帳を取り出す。何度見ても変わることのない残高の数字にまた息が漏れる。幸也が医師になるまであと5年。それまでこのお金が持つとは思えない。計算するたびに胸が苦しくなる。幸也は気にして「バイトをするから生活費はいらない」というがそんなわけにはいかない。バイトをしながら医師になれるわけがない。そんな甘い勉強ではないだろう。幸也がバイトをするくらいなら私が隠れてバイトをした方がいいのではないかと考えてしまうくらい切羽詰まっていた。幸也の支えになりたい、その気持ちだけが私の生きている証のようだ。
その時スマホが震えた。画面を見ると幸也の名前が表示されている。

『姉ちゃん、ありがとう。この間送ってくれたお金で上着を買ったよ。思ったよりこっちは寒かったから助かったよ』

そんなメッセージを見て思わず笑みがこぼれた。あの子は本当に優しい。その優しさが嬉しくて、同時に胸が締め付けられた。もっと頑張ろう、そう思った。
箸を手に取ると冷めかけた味噌汁を口に運ぶ。ひとりきりの味気ないご飯が胃袋の中に染み渡ってきた。
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