君を守る契約
今日は遅番のためお昼の時間が夕方になった。とは言っても空港は常に多くの人が働いており、程よく人が座って休憩をとっていた。

「ここいいですか?」

ハッとすると目の前に松永さんがいた。この前よりも混んでいないのに、どうしてまたこの席を?と思うが、私が頷いたのを見て前の席に座った。
彼の視線がまた私の弁当に向いていることに気が付く。

「ははは、残り物ばかりで恥ずかしい」

私はおどけるように、彼に聞かれる前に言った。

「美味しそうですよ」

「そんなことないです。本当に節約のためで、たいしてお金もかかっていないようなものなので恥ずかしいです」

お弁当箱を隠したい衝動に駆られるが、すでに見られてしまったあとなのでどうにもならない。彼は今日も食堂のメニューで定食を選んんだようだ。

「節約しているんだよね」

「はい。弟が医学部に通っていて、仕送りをしているんです」

「そうか。医学部はお金がかかるって聞いたことがあるよ」

「はい。国立に入ってくれたのですが、地方なので生活費もかかりますし。両親がいないので弟には私しかいないんです」

暗くならないように少し笑顔を見せながらそう話すが、松永さんは驚いたような表情を浮かべていた。

「それじゃ、君が全部?」

「奨学金ももらってますし、まだ両親の保険金もありますから」

そう伝えつつも、自分の言葉に思わずため息が出そうになった。口では平気なふりをしても、現実の数字は嘘をつかない。
彼は何も言わなかった。ただ、黙ってゆっくりと頷いた。その彼の仕草が、なぜか胸の奥に優しく残った。
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