君を守る契約
「少し落ち着きましたか？」

私が紅茶を口にすると彼は私の顔を見てきた。

「はい……」

「すみません、突然呼び出して」

「いえ」

そのあとの会話が続かない。私も何を言ったらいいのか分からず、手にしたカップをずっと見つめていた。しばらくの沈黙ののち、松永さんが口を開く。

「昨日の話を受けてくれると聞いて、嬉しく思ってます。まだ、驚いているかと思いますが、もう一度きちんと話したいと思って」

彼の言うメリットについてだろうか。私は聞くのが少し不安だが、頷く。

「俺の家はいわゆるお堅い家なんです。父は航空関係のグループ会社の重役で、俺の結婚相手まで勝手に決めようとしている。弟は父の足元で仕事をしているが、言うことを聞かない俺を監視する意味もあると思う」

彼は淡々と話すが、どこか感情を押し殺すような話し方に彼の苦しさを感じた。

「俺は、自分の人生を誰かに決められたくない。相手がどんな人でも愛してもいないのに“妻“だとは言えない。父の監視下に置かれるような妻はいらない。だから親を説得するために“結婚“という形が必要なんです」

彼の話す言葉はどこか違う世界の話のようで、私には現実味がない。今の時代に親が結婚ないてを決めるだなんて……。

「それなら松永さんは好きな人と結婚したらいいのではないですか？」

思わず本音が口から出てしまった。
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