君を守る契約

契約

約束より少し早くマンションの下に降りると彼の車はすでに止まっており、慌てて小走りに駆け寄った。

「ごめんなさい、遅くなりました」

「こちらの方が早くつきすぎただけですから気にしないで」

私がシートベルトを止めるのを見ると、車が動き出した。

「早速連絡をもらえて嬉しかった。詳しい話をしたいし、俺のマンションに行こうと思うんだがいい?」

確かにカフェでするような話ではないだろう。はい、と言うと彼は頷いた。
車のステレオからはポップな音楽が流れており、この場に少し似合わない。でも無音でいると私の心臓の音が聞こえてしまうそうなので明るいこの音楽に和まされる。先ほどまでぎゅっと握り締めていた手が少しだけ緩んだ。

マンションの前につくと彼は車を地下駐車場に停めた。
案内されるままについて行くと、高層階にあるこの部屋は外の喧騒を完全に閉ざしていた。無機質な空間なのに不思議と清潔感と静けさが漂っていた。
彼は着ていたジャケットを脱ぐとソファに置く。そのまま無言でキッチンに入るとケトルに水を入れていた。

「よかったらそこに座って」

立ち尽くす私に声をかけると彼は食器棚からカップを取り出していた。

「あの……手伝いましょうか?」

「大丈夫です、このくらいなら」

その言葉に彼の家事能力が伺える気がした。私はお言葉に甘えてソファに腰掛けると、彼はカップを持ってやってきた。湯気の立ちこめるカップにはミルクティーが入っており、茶葉の香りが優しい気持ちにさせられた。
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