君を守る契約
「あの……自分の生活費くらいは出します。それにここに住まわせていただく限り、掃除くらいはしますから業者は解約してください。食事はどうしますか？」

彼は契約として私との入籍だけを希望で、それ以上の関わりは望まないのだろうか。彼が家にいるときは部屋にこもっていた方がいいのだろうか。最初にそのあたりの話を詰めておかなければと思い頭に浮かんできた懸案事項を確認していく。
結果として自分の家のように自由にしていいということ、家事は分担、食事は私と彼の時間が合えば作る、お金は全て彼が払う、親戚のに集まりなどは同伴する。思ったよりも自由度が高い。お金も全て出してくれると言われたのでこの3年間貯金に勤しめば幸也の残りの学生生活に十分な蓄えができるだろう。
彼はパイロットとしても十分な収入はあるが、それに加え、学生の頃から投資をしておりその収入もあるので弟を援助しても問題はないと言っていた。
世の中、こんなにお金を持っている人もいるのだなと感心してしまった。

「俺は形だけの結婚でも守ると決めたら本気で守ります。約束を破ることはしません。それが俺のやり方ですから」

その言葉に契約以上の思いを感じてしまった。契約のはずなのに誓約のような響きが残った。

「わかりました。私も松永さんのことを3年間、精一杯支えさせてください」

思わず彼の言葉に呼応するように口に出てしまった。その言葉に彼も一瞬驚いたような表情を浮かべるが、瞳が柔らかく揺れたように思った。
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