君を守る契約
「こちらはどうでしょうか?」

濃紺のベルベットのジュエリートレイには5種類の指輪がのせられていた。全てまばゆいばかりの輝きでクラクラしそうだった。

「これなんてどう?」

彼はトレイから外すと私の指に嵌めると私の手は自分のものとは思えないくらいに輝いて見えた。

「とてもお似合いですね。お肌の色にこのダイヤモンドのカラーが映えますね。こちらですとこの結婚指輪と重ね付けできます」

そう言って店員さんが彼に手渡してきたのはプラチナのリングにダイヤモンドが埋め込まれたものだった。
ふぇぇ……。
私には恐れ多くて手が震えそう。これをつけて仕事なんてとてもじゃないけどできない。

「ちょっとこれは……」

そう?と言うと彼も店員さんも次々と指輪をはめてくれるがどれも光り輝いていて私に似合うとは思えなかった。

「どれも似合うから悩むね」

彼はそういうと並べられた指輪を真剣に見比べている。また店員さんが席を外した隙を見て、私は彼に慌てて言った。

「1番安いやつにしてください!!!」

その言葉に彼は笑顔でそっと首を振った。

「すみません、これにします」

彼が指を指したのは一際華やかなものだった。ここにあるものは全て値札が付いていないが、明らかにこれが1番高そうに見えた。細い土台にウェーブを描くようにダイヤモンドが連なりとても華やかだ。これに合わせる結婚指輪の方も緩やかなカーブを描いており、小さいがダイヤモンドがいくつも埋め込まれていた。私は彼の顔を見て首を横にフリフリするが、彼はそれを見て笑い、店員さんにも「彼女は思慮深い人で」なんて言い、オーダーを進めてしまう。ふと見ると彼の方のリングは私と一緒の緩やかなカーブはついているが、私のようにダイヤモンドは埋め込まれておらず、シンプルなものだった。

「私も一緒のものがいい」

「そうだね。一緒のものだよ、これは」

彼は笑ってそう答えるが、私の意図する言葉はわかっているはずなのに気がつかないふりをされた。
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