君を守る契約
「もう少し今後の話をするためにマンションに戻りましょうか。夕飯に何かデリバリーでもすればいいし」

「そうですね。でも夕飯は私が作らさせていただきます。今日はきっと多額のお買い物をしてしまったので」

その言葉に彼は今度こそ楽しそうに笑っている。

「お金の心配は大丈夫です。でも、せっかくなので浅川さんの食事をご馳走になってもいいでしょうか?」

「もちろんです」

「でも、冷蔵庫は空なんです。入っているのはマヨネーズと水、チーズとミニトマトくらいかな」

なんとなく感じていたが、そこまで空に近いとは……。彼の車でマンションの近くのスーパーに連れて行ってもらうとカートにカゴをセットした。彼は明らかに買い物慣れしていな人の動きをしており、キョロキョロしている。楽しそうに野菜を見つめているが、何を手にしていいのかわからないようだ。
スーパーでの買い物を終える頃にはカゴには野菜や肉、調味料などがぎっしりと詰まっていた。炊飯器はあるのに米はないと言っていたのでついでに米を買うと、「うちでコメを食べる日が来るなんて」と少し感動していた。支払いを済ませ、外に出るとすでにオレンジ色の夕焼け空が広がっていた。冬の日が暮れるのは本当に早い。
松永さんが重いものを持ってくれ、私はというと調味料や果物だけ。

「結構買いましたね」

彼はその量に少し驚いているようだ。その反応が少しだけいつもの落ち着いた雰囲気の彼と違いなんだか少し可愛らしく見えてしまう。

「お料理って色々と必要なんです」

「勉強になります」

彼の口元に浮かぶ笑みを見て、私もようやく力が抜けた。
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