君を守る契約
思ったよりもあっという間に引っ越しの荷物は片付いてしまった。
お昼を外で食べないかと誘ってみるが、彼女はささっとありあわせのもので作ってしまった。あまりの手際の良さに俺はやれることがなく右往左往するだけ。向かい合わせて座り、湯気の立ち登る中で彼女は俺が食べるのを心配そうに見つめているのがなんとも可愛かった。
あぁ、幸せだなとじんわりと心に広がってきた。
ただ、指輪のことを言うタイミングをずっと探していた。彼女を見た瞬間、安堵のようなものが広がっていった。
「はめてくれたんだね」
手を救うと、彼女は驚いたように指先が少し震えていた。その震えを止めてあげたくて、気がつくと自分の口元までそれを運んでいた。ほんの一瞬だったが、触れるか触れないかの距離まで接近したことに彼女の瞳が驚きで揺れた。
しまった……、と思ったけれどもう遅かった。俺はさりげなくその手を離すと彼女もさっと引っ込めてしまった。
俺の中でどんどんと大きくなるこの気持ちが止まらなくなっていた。彼女を“契約“という言葉で縛ったのは間違いだったのかもしれない。
指輪をとりに一緒に行った時、何があったのか一瞬にして彼女の顔が曇ってしまった。
どうしたんだろう。俺にはその理由がわからない。先ほどまでと何かが違うというのはわかるが、どうしたらいいのかわからずにいると、彼女は取ってつけたような理由を口にし、急に走り去ってしまった。
「琴音!」
呼んだ声は彼女に届かなかった。振り向くことなく、彼女は人混みの中に消えていってしまった。何があったのかはわからない。でも今無理に追いかけるのは違う気がして足が動けずにいた。
彼女は無責任なことはしない。
だからこそ、家に帰った時には明るく迎えてあげよう。彼女の家はここになったのだから、家に帰ってホッとできるような空間にしようと心に誓った。
翌朝、何事もなかったように時間が流れた。
昨日はあのあと俺よりも2時間くらい遅れて帰宅した彼女は和菓子を手に帰宅してきた。そして何事もとなかったかのように振る舞っており、俺も何も言わずにいた。
これでいい。
今はまだ彼女との距離感を測る時だと自分の気持ちを飲み込んだ。
お昼を外で食べないかと誘ってみるが、彼女はささっとありあわせのもので作ってしまった。あまりの手際の良さに俺はやれることがなく右往左往するだけ。向かい合わせて座り、湯気の立ち登る中で彼女は俺が食べるのを心配そうに見つめているのがなんとも可愛かった。
あぁ、幸せだなとじんわりと心に広がってきた。
ただ、指輪のことを言うタイミングをずっと探していた。彼女を見た瞬間、安堵のようなものが広がっていった。
「はめてくれたんだね」
手を救うと、彼女は驚いたように指先が少し震えていた。その震えを止めてあげたくて、気がつくと自分の口元までそれを運んでいた。ほんの一瞬だったが、触れるか触れないかの距離まで接近したことに彼女の瞳が驚きで揺れた。
しまった……、と思ったけれどもう遅かった。俺はさりげなくその手を離すと彼女もさっと引っ込めてしまった。
俺の中でどんどんと大きくなるこの気持ちが止まらなくなっていた。彼女を“契約“という言葉で縛ったのは間違いだったのかもしれない。
指輪をとりに一緒に行った時、何があったのか一瞬にして彼女の顔が曇ってしまった。
どうしたんだろう。俺にはその理由がわからない。先ほどまでと何かが違うというのはわかるが、どうしたらいいのかわからずにいると、彼女は取ってつけたような理由を口にし、急に走り去ってしまった。
「琴音!」
呼んだ声は彼女に届かなかった。振り向くことなく、彼女は人混みの中に消えていってしまった。何があったのかはわからない。でも今無理に追いかけるのは違う気がして足が動けずにいた。
彼女は無責任なことはしない。
だからこそ、家に帰った時には明るく迎えてあげよう。彼女の家はここになったのだから、家に帰ってホッとできるような空間にしようと心に誓った。
翌朝、何事もなかったように時間が流れた。
昨日はあのあと俺よりも2時間くらい遅れて帰宅した彼女は和菓子を手に帰宅してきた。そして何事もとなかったかのように振る舞っており、俺も何も言わずにいた。
これでいい。
今はまだ彼女との距離感を測る時だと自分の気持ちを飲み込んだ。