君を守る契約
「彼女とは数ヶ月前に知り合いました。仕事柄時間が不規則なので、それならばと結婚を決めふたりで暮らし始めたところです。彼女の料理はなんでも美味しいです」

宗介さん、どうしちゃったの？　彼の言葉に私はここにいるのが耐えられない。思わず立ちあがろうとすると、彼は少し照れたように笑うと、

「あんまり噂になると彼女が困るので、できれば優しく見守っていただけると助かります。よろしくお願いします」

彼は立ち上がると周囲に頭を下げていた。思わず私も立ち上がると頭を下げた。
彼が今こうしてはっきりと結婚宣言したのはいち早く周知させたかったのだろう。複雑な気持ちだが、彼がこう宣言してくれたのでしばらくは噂の的になるだろうが、直接何か言われることはないだろう。本当に見守ってもらえるといいなと心の底から思った。
私が頭を上げるとフロアの向こうにいる宗介さんと目が合った。彼は私を見て優しく笑っていた。

午後になりカウンター業務に入るが、周囲からの視線はずっと感じたままだった。
クルーが機内に搭乗する際も必ず私の顔を見てから左手に視線を落とし、そしてまた顔を見ていった。何も言われないが、見定められているとひしひしと感じる。こんなのがずっと続いたらと思うと気が滅入る。同僚でさえもヒソヒソ話をしている声が聞こえてくる。本来なら彼が私のような地上職員と結婚するなんてあり得ない。彼の経歴や見た目からしても私を選んだことが不思議でならないのだろう。
私は一日中針のむしろのような環境でどうにか一日の仕事を終えると疲労困憊でマンションに辿りついた。
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