君を守る契約
昼休みになり、琴音に言われたようにどこでお昼を食べようかと悩む。
なるべく目立たないように、とお弁当袋を持ち周囲を見渡した。
会社の食堂ではなく休憩スペースの方の端に空いている席を見つけるとようやくお弁当を開く時間がきたとばかりにワクワクしてしまった。お弁当の包みをほどき、黒い弁当箱の蓋を開けた瞬間、甘い卵焼きの香りがふわりと広がった。その匂いに惹かれ、早速口に入れる。

「あ……甘いんだな」

思わず口角が上がる。思っている以上に甘かったが、嫌な甘さではない。疲れの取れる程よい甘さに頬が緩む。ピーマンとベーコンの炒め物も香ばしくてどんどん食べ進めてしまう。そぼろのご飯も、きんぴらも全て美味しかった。

「琴音の味だな」

誰にも聞かれないように、そっと呟いた。
彼女の味……それは例えるなら優しい味だ。彼女から滲みでる優しさに溢れた味で食べると元気になれる、そんな気がした。
同僚たちが向かいの席に座ってきた。彼らは今日はコンビニ弁当のようで食堂に行かなかったのだろう。
俺の弁当をちらちらと見ている。

「機長、奥さん手作りっすか? 彩り完璧じゃないですか」

「弁当の中身で愛情がわかるって言いますよ〜」

からかうような声にも、今日はなぜか素直に笑って返せた。

「そうかもしれないな」

そう言ってまた箸を進める俺を見て同僚は驚いたような表情を浮かべていた。
お弁当を食べ終わるとそっと蓋を閉めた。同僚の言うように琴音の愛情が本当に沢山詰まっていたらどんなに幸せだろうか、と思うとほんの少し胸につかえるものがあった。
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