君を守る契約
私ひとりになってしまった朝はなんだか静かに始まる。
けれど空港に行けば今日もこの喧騒にのまれ、活気に溢れた1日が始まる。

「浅川さん、4番ゲートお願いします」

無線の声に返事をし、手にしたタブレットで搭乗リストを確認した。
ちょうどその時、前方から歩いてきた男性と肩が軽くぶつかった。

「申し訳ありません」

反射的に頭を下げると、黒いパイロットスーツの男性が立ち止まった。無駄のない動きに整った姿勢。

「いや、こちらこそ」

低く落ち着いた声だったが、どこか冷静すぎるほどの静かな響きがあった。ふと手にしていたペンを落としてしまうと、彼がさっと拾い上げ、私に差し出してきた。

「はい」

「あ、ありがとうございます」

すると彼は小さく頷き、足早に去っていった。確か松永さん……だったかな、とふと思ったが直接話す機会もないパイロット。そのためこんな一瞬の出来事はすぐに忘れ去ってしまった。

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