君を守る契約
夜帰宅すると部屋は静まり返っている。幸也が行ってからだいぶ経つのにまだこの静かさに慣れない自分がいた。
戸棚の引き出しを開けると中には何度も見慣れた通帳が置かれていた。中を開くと最後のページに押されている残高の数字を見て小さなため息をついた。
まだある……。でも、これで幸也が医師になるまでの道のりを考えれば決して十分とは言えない。国立大学とはいえ、入学金や授業料、教科書、実習費、寮費。それに加え参考書なども買うとなると親の保険で賄えるのは持って数年。奨学金と自分の給料でやりくりしていかなければならないが、私の給料なんてそんなに多くはない。全て差し出してあげたいがそれだって足りるか不安なくらいだ。仕事の昇給はわずか。。残業を増やしたところで劇的に金額が増えるわけではない。それでも何もしないよりはましだと思ってしまう。
幸也には心配をかけたくない。でもきっとあの子は私が無理しているって気がついていることだろう。そう思うと胸がギュッと締め付けられる。
冷凍庫にあるご飯を取り出すとレンジで温め、そこに卵を落として簡単な夕飯を済ませた。
私ならいくらでも我慢できる。我慢してでも守りたいものが私にはあるから。
あの事故の日からずっと幸也は医師になることを目指してきた。両親が必死に心臓マッサージを受けている姿を目の当たりにして強い衝撃を受けたのだろう。あの時の北川先生の姿も彼の中で深く刻まれている。あんなすごい先生になりたい、苦しんでいる人を少しでも助けられる人になりたい、そう言い続けてきた夢がようやく現実のものになるその姿に、私はどんなことがあっても力になりたいと思った。
私の人生よりも大切なものがある。
その気持ちだけが今の私を動かしている。
戸棚の引き出しを開けると中には何度も見慣れた通帳が置かれていた。中を開くと最後のページに押されている残高の数字を見て小さなため息をついた。
まだある……。でも、これで幸也が医師になるまでの道のりを考えれば決して十分とは言えない。国立大学とはいえ、入学金や授業料、教科書、実習費、寮費。それに加え参考書なども買うとなると親の保険で賄えるのは持って数年。奨学金と自分の給料でやりくりしていかなければならないが、私の給料なんてそんなに多くはない。全て差し出してあげたいがそれだって足りるか不安なくらいだ。仕事の昇給はわずか。。残業を増やしたところで劇的に金額が増えるわけではない。それでも何もしないよりはましだと思ってしまう。
幸也には心配をかけたくない。でもきっとあの子は私が無理しているって気がついていることだろう。そう思うと胸がギュッと締め付けられる。
冷凍庫にあるご飯を取り出すとレンジで温め、そこに卵を落として簡単な夕飯を済ませた。
私ならいくらでも我慢できる。我慢してでも守りたいものが私にはあるから。
あの事故の日からずっと幸也は医師になることを目指してきた。両親が必死に心臓マッサージを受けている姿を目の当たりにして強い衝撃を受けたのだろう。あの時の北川先生の姿も彼の中で深く刻まれている。あんなすごい先生になりたい、苦しんでいる人を少しでも助けられる人になりたい、そう言い続けてきた夢がようやく現実のものになるその姿に、私はどんなことがあっても力になりたいと思った。
私の人生よりも大切なものがある。
その気持ちだけが今の私を動かしている。