用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
後回しにしてしまった教会へ向かい、孤児たちに文字の読み書きや計算を教えたエレインが礼拝堂に向かうと、なにやら騒がしい声が聞こえてくる。
その中にハーブという単語を聞き取ったエレインは、そっと中の様子を伺った。
「困ります。何度も申し上げているように、今はハーブのブレンドは行っていないのです。お力になれず申し訳ございませんが、お引き取りください」
「では、いつならしていただけますか? しばらくはこちらに滞在しておりますので、どうか」
申し訳なさげに頭を下げる神父に、長身の男性が低姿勢で頼み込む姿があった。後ろ姿しか見えないが、とても質のよいコートを着ているところを見ると、貴族だろう。
エレインは話しを聞きながら二人の元へと近づいていく。
「それが、フォントネル産ハーブは今品切れ状態が続いていまして入荷目途が立っていないのが現状なのです」
「そんな……。お願いします、まだ幼い家族が苦しんでるんです……どうにかならないでしょうか……」
「そう言われましても……あっ」
神父がすぐ近くに来たエレインに気づきハッとする。それにつられて貴族男性もこちらを振り返った。
エレインは男性を見上げる。
どこまでも続く夏空のように澄み渡る碧眼が、エレインの姿を捉え、ほんの一瞬だけ驚きの色が滲んだ。
宝石を埋め込んだような瞳を縁取るまつ毛は長く、上品な弧を描いて頬に影を落としている。凛々しい眉に洗練された頬のラインと鼻梁、どこを取ってもケチのつけようがない美男子だ。
よく手入れされた艶やかな黒髪はセンターで分けられ、晒された額は理知的な印象をエレインに与えた。
さらに、エレインは彼の周囲に視線を巡らせ、見えた光景に微かに目を瞠る。
(この人……何者なのかしら……)