用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「最近、ご令嬢の間でピンクダイヤが流行っているんです。私もほしいなと父にお願いしてるんですけど、とても貴重な宝石らしくなかなか手に入らなくて……」
「そうか、ならそれは俺がシェリーにプレゼントしよう。きみの美しいこのピンクブロンドとよく似合うだろう」
「嬉しい!」
 エレインは王太子であるダミアンの発言に、気分が憂鬱になる。
(宝石を買うお金があるのなら、もっと国の予算に割くべきなのに)
 エレインは、王太子の婚約者となってから妃教育を受けている。その中で国政についても学ぶ機会があり、今現在、この国の経済状況はとても褒められたものではないことを知った。
 教会を見ていても、貧困者がとても多いことはエレインも知っていたが、これほどまでに深刻だとは知らなかったのだ。
(なのに、王室や貴族たちはとても裕福な暮らしをしているのよね……)
 国民が汗水たらして稼いだお金をこれでもかと吸いあげている証拠だろう。
「あぁ、この俺に入手できないものなどあるものか。……あぁそうだ、母上からエレインにもなにかプレゼントをと言われていたんだった」
 いかにも気乗りしない、といった雰囲気を醸し出すダミアン。
「そうだな、指輪はどうだ? いつもその地味な指輪しかつけていないだろう」
 カップを持ったエレインの、右手人差し指に嵌っている指輪に視線が寄せられる。金色の指輪は、シグネットリングのように大きな台座がある以外、宝石もなにもついていない質素なデザインで全体的に色が黒くくすんでいる。
 エレインは、それを隠すように左手で指を握って膝の上に置いた。
「それでしたら……教会のハーブ畑を広げたいのでそちらに予算を回し」
「――あぁもういい。そんなに草が好きなら草の相手をしていろ。退席を許す」
「失礼いたします」
 すぐさま退席し、二人の姿が見えないところまできたエレインは、ようやく呼吸ができた心地がした。

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