用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 光がはじけるようにして、一斉に周囲に散っていく。
 その直後に起きた光景に目を疑った。
「え……」
 まだつぼみもなっていないカモミールが、ぐんぐんと背丈を伸ばしたかと思うとぱぁっと白い花を一斉に咲かせたのだ。
 緑だった景色が、一瞬にして白に変わる。
「えっ、えっ!? な……っ!? な、なにが起こったんですか今! えぇっ!? エレインさま、見ましたか今の!」
 そばにいたニコルが驚嘆の声を上げる。
 エレインは、ありえない出来事に声を失っていた。
(なに……これ……、こんなの、初めて……)
 目に見える変化が起こるほどの力など使ったこともなく、信じられない気持ちでいっぱいだった。
「え、エレイン……無理はしないとあれほど……」
「い、いえ、決して無理はしておりませんし、体もなんとものないのですが……」
「えぇっ、今の、エレインさまがされたんですか!?」
 ニコルのその反応で、二人は顔を見合わせる。
 あまりにずっと一緒にいるために、精霊について伝えていないということをうっかり失念していた。
「えっと……」
「……その話は帰りにするとして。本当になんともないんだね?」
「はい……びっくりするくらい、なんとも」
 強がりでもなんでもなく、本当だった。
 いつもならこの広さだと効能を高めるだけでもぐったりするくらい疲れるのに、少しの倦怠感すら感じない。
 あれだけ急成長させたのにも関わらず、だ。
(すごい……これが契約の恩恵なのね)
「これほどとは、驚きだ。だけど、いくら負担が軽くなるからといって使い過ぎるのは危険だ……体にどう影響するかも不明瞭だから、本当に必要最低限にしておくに越したことはないだろう」
 それはエレインも懸念していたことだったので、素直にうなずく。
 使い過ぎたときの代償がわからない状態では、おいそれと使うには怖いものがある。
 今日はこのくらいにしておこう、ということでエレインたちは帰路についた。
 帰りの馬車の中でニコルに力のことを話し、他言無用の旨を伝える。
「エレインさまは一体どんな魔法を使っているのかと思っていましたが、まさか精霊の力だったなんて! というか、精霊って本当に存在するんですねぇ」
「し、信じてくれる、の?」
 心底驚きつつも、納得しているニコルにエレインの方がおろおろしてしまう。
「信じるもなにも、あんな場面を見たら信じるしかないですよ! いやむしろハーブの謎が解けてすっきりしました。もうみんな首がもげるんじゃないかってくらい首を傾げていたんですよ、あんなからっからの土地でなんであんなにハーブが育つんだ?って」
「そ、そう……」
(気味悪がられないか、少し不安だったけど……杞憂だったみたい)
 明るく素直なニコルには、いつも救われている。
「ずっと黙っていてごめんなさい」
「こうして教えてくださったので許してあげましょう」
 なぜか胸を張って得意げに答えるニコルに、エレインとアランは二人して顔を見合わせ相好を崩した。
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