用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 別れのときを考えると、これ以上深く関わるべきではないと、頭ではわかっていても、どうしても自分から距離を取ることは躊躇ってしまう。
 すぐそこに迫るそのときを考えると、胸が苦しくなって息が上手くできなくなる。
(暗くなってしまうから考えるのはやめましょう)
 意識を変えるため、軽く首を振ってエレインは顔を上げると、中庭が見えてきた。
 最初は、作業を中断されることに不満があったが、よく手入れされたガーデンは精霊も多く舞っていて、見ているだけで気持ちが持ち上がってくるし、少し歩くのはいい気分転換にもなるため、ティータイムも悪くないと今では思っている。
 都合がつくとアランも来てくれて、楽しいひと時を過ごすこともままあった。
「あら、今日は殿下がいらっしゃるの?」
 ニコルの案内で向かったガゼボには、お菓子と軽食が二人分用意されていた。
「その予定でしたが、仕事が溜まっているらしく、セルジュさまにお茶してる場合じゃないと怒られて来れなくなったそうです」
「まぁ……、セルジュさんも大変ね」
 かんかんに怒ったセルジュの顔が容易に浮かんできて、エレインはくすりと笑う。
「え、そこは殿下の味方をしてあげないんですか」
「ニコルと殿下って、なんとなく似ている気がする……」
「どういう意味ですか? 私はあんな色男ではありませんが」
「そういうことを言っているんじゃないのよ」
 どういことですか、と詰め寄ってくるニコルを交わして、ガゼボの椅子に腰掛けると、タイミングを合わせたように侍女がお茶のポットが乗ったワゴンを押して近づいてくる。
「あら、アン、ご家族の体調はもう大丈夫なの?」
「は、はい、おかげさまでよくなったため、昨日戻ってまいりました」
 アランが付けてくれた王宮の侍女アンは、ポットから目を離さずにそう答えた。零さないように気を付けているのか、どことなく返事がたどたどしい。
「そう、戻ってきたばかりなのにありがとう。今日はなんのお茶かしら」
「ミントティーでございます」
「爽やかな香りね」
 うっすらと黄色味のかかった液体が、カップを満たしていく。
 入れ終わったそれが、ソーサーごとエレインの前に置かれる。
 その間、エレインは思考を巡らせていた。
(これは……どうするのが正解かしら……)
 カップから立ち上る湯気を見ながらいろいろな可能性を思案していると、ふとその向こうに人影を見つけ、エレインはおもむろにカップを口へと運んだ。
(またご迷惑をかけてしまうわね……)
 申し訳ない思いが胸を占拠する中、エレインの体は椅子から崩れ落ち、地面へと倒れ込んだ。
< 125 / 150 >

この作品をシェア

pagetop