用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 家族のために必死に駆け回って、頭を下げることは、貴族男性にとって容易にできることではないだろう。
 彼の、大切なものを守る姿勢は、エレインにはとても眩しく映った。
「あんな風に家族に大切に思ってもらえたら幸せでしょうね……」
 自分は、大切に思われるどころか、憎まれている事実がエレインを悲しくさせた。自分には到底手の入らない幸せが、とてもうらやましい。
(でも、私には、お母さまとの思い出があるから大丈夫)
 十歳までの母との記憶は、色あせることなくエレインの中にある。それを大切にしまって、悲しくなったり苦しくなったりしたときに、一つ一つ思い出しては母の優しさに縋るのだ。
(大丈夫、寂しくなんか、ないわ)
 そう何度も自分に言い聞かせて生きてきた。
「わ、なぁに?」
 不意に右手首に熱を感じて見ると、無数の光がエレインの手を包み込んでいた。
 さっき、シェリーに突き飛ばされ、床に手をついた拍子に捻ってしまっていた箇所だ。
 増していくばかりだった痛みが、すーっと引いていくのを感じる。
 精霊がエレインに治癒を施してくれたのだった。
 こうして、エレインは【精霊の力】を借りることができた。
 そう、干からびて痩せた土地でもハーブが育つのも、効能が強くなるのも、全部精霊の力の賜物だった。
 エレインの知識でブレンドしたものにプラスして、精霊がおすすめを選んでくれることもある。
 精霊は、物心ついた頃からエレインと共にあった。
 母が亡くなってからも、精霊たちはエレインを助け励ましてくれてた。
 どんなに父から見下されても、義母とシェリーから嫌がらせをされても、母の思い出と共に精霊がいるから耐えられた。
「ありがとう、ふわふわさんたち。おやすみなさい」
 そう言うと精霊たちは嬉しそうにエレインの周りをふわふわと飛び回る。
 精霊のぬくもりに包まれながら、エレインはそっと目を閉じた。

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