用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~


「エレインさま……」
「ニコル」
 心配そうな顔のニコルに、エレインは微笑む。
 その顔には、諦めや悲しみ、悔しさなどさまざまな感情が滲んでいた。
 表情から察したのか、ニコルはエレインの手を取り握りしめる。その手の温かさと優しさに、胸が熱くなる。
「とりあえず、城を出ましょう」
 長い長い廊下を歩き、馬車乗り場まで出た二人は、そこで馬車係に帰る旨を伝えて馬車が来るのを待つ。先ぶれが出ていなかったため、少し時間がかかると言われた。
 エレインは、ニコルにパーティでの顛末をかいつまんで報告する。
「お咎めはなし。フォントネル侯爵家からは勘当。共同事業からも外されて、私はもう用済みになったわ」
「そんな……」
「ニコルにもたくさん手伝ってもらったのにこんな結果になって、ごめんなさいね」
「私はいいんです! エレインさまがこんなにやつれるくらい身を挺してやってこられたのに……それをこんな形で奪われるなんてあんまりです!」
 ニコルは涙目になって怒りをあらわにした。悔しがってくれる彼女を見て、それだけでエレインのこれまでの努力が報われた気になる。
 すべてを奪われてしまったが、エレインの心は信じられないくらいに晴れ渡っていた。
 こんな自分でも、誰かの役に立てるならば、と思って乗り出した事業化だった。
 それが、王室との共同になったり、王太子の婚約者になったり、事態は思いもよらない方へと進んでしまい、エレインの気持ちは置いてけぼりにされたままだった。
 ただただ父や王太子に付き従って「こなす」だけのそれに、思い入れを持てるはずもなかったのだ。
「ありがとう、ニコル。確かに悔しさもあるわ。でもね……でもね、私……」
 広間に居たときからずっと堪えていた感情が、腹の底からもくもくと膨張して込み上げてくるのをエレインは止められず、隣のニコルに勢いよく抱き着いた。
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