用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 二週間前、ハーブが欲しいと教会にやってきた男性だった。
 高位の貴族だろうとは思っていたが、王太子の誕生日パーティーに招待されるほど家格の高い貴族だったのだ。
「お取込み中失礼。私は、隣国カムリセラ国・第三王子のアラン・ド・キュステ ィーヌと申します」
 エレインとニコルの前まで歩み出た彼はそう名乗り、右手を体の前に添えて腰を折る。
「うそ、ほ、本物の王子さまだった……!」
「お、王子……」
 ニコルの驚く声に、エレインも息を呑む。
(貴族だとは思っていたけれど、まさか王族だったなんて……!)
 知らずとはいえ、王族相手に「薬が欲しければ一番高価なものを差し出せ」と脅すなどあるまじき行為。
 自身のしでかした無礼千万な行いを思い出し、エレインは全身から血の気が引いていくのを感じた。
 驚愕と畏怖の念で思考の停止したエレインに気づいていないのか、アランは「あぁ、やっと名乗れましたね」と相好を崩す。
 そして、呆然と立ち尽くすエレインの手を取り指に口づける仕草をして、上目遣いにエレインを見た。
「またお会いできて光栄です。――レディ・エレイン」

< 32 / 150 >

この作品をシェア

pagetop