用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 少し話しがしたいというアランの申し出を了承すると、一行は馬車で王城を離れ、街にある貴族御用達の高級宿屋に案内される。そこは、外観も内装もまるで貴族の屋敷と変わらない造りになっていた。
 外泊などしたことのないエレインは、こんな場所が街の中にあるのかと驚く。
 案内された客室は、応接室のようにソファとローテーブルが中央に置かれており、壁際にはちょっとした書き物ができるデスクとチェア、姿見などが程よい間隔を保って備わっている。
 エレインはアランに促されてソファに着席する。
 程なくして、アランの従者だというセルジュがお茶と焼き菓子を運んできてくれた。
「どうぞ、お召し上がりください」
 丁寧な無駄のない所作で、カップと焼き菓子の乗ったプレートを置く。
「ありがとうございます」と礼を述べれば、セルジュは銀縁眼鏡の奥で目を細めた。
 エレインは紅茶を一口飲んでから、口を開いた。
「その後、ご家族の状態はいかがですか?」
 ずっと気になっていたことを訊くと、アランは少し困ったように笑う。
「あのときは、エレイン殿には本当にお世話になりました」
「いえ、そんな……。あの、どうかエレインとお呼びください。それと私にそのような丁寧な言葉遣いは必要ございませんので、どうぞ気安くお話いただければと……」
 エレインの記憶が正しければ、第三王子は二十三歳だ。年上でさらに王子という立場の彼に敬語を使われるのはいたたまれなくて、エレインは懇願する。
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