用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 この十日間、食事は朝昼晩ずっとアランと共に取ってきた。セルジュとニコルも同席を許されているため、みんなでさまざまな会話を交わした。
 この十日間でだいぶ打ち解けたとエレインは思う。
 とくにアランの穏やかな社交性がそれを助長していた。彼は本当に、王子という地位を思わせないほどにエレインたちに気安く接してくれる。
 エレインもすっかり安心して、この旅を楽しんでしまっているほどだ。
「お、今日は魚料理か」
「美味しそうですね」
「わー、エレインさま、見てください! 私の目玉焼き、黄身が二つあります! 双子ちゃんです!」
 ニコルが嬉しそうに言うので、エレインがニコルのプレートを覗き込んだ。
「あら本当、珍しい」
 ニコルの言う通り、少し小ぶりな黄身が二つ並んでいる。
「精霊がやってきたね」
 アランの口から出た「精霊」の二文字にエレインはどきっとする。
 精霊というのは、おとぎ話にしか出てこないもので、普段生活していて耳にすることの少ない言葉だから。それを子どもではなく、アランが口にしたので驚いた。
「精霊、ですか?」
 ニコルが首を傾げる。
 きょとんとしたニコルを見て、アランは一瞬不思議そうな反応を見せたが、すぐに「あぁ」と微笑んだ。
「これはうちの国の古い風習でね。嬉しいことやびっくりするようなことが起こるとそれを妖精の仕業だとして『精霊がやってきた』『精霊の仕業だ』って言うんだ」
「へぇ、なんか可愛いですね」
「この国は精霊と(ゆかり)があるのですか?」
 エレインの国では、精霊に関する書物や文献はほとんどなく、精霊のことを知りたくても調べることすら叶わなかった。
 だから、もしこの国が精霊となにか縁があるのなら、そうした類の書物もあるかもしれない、と淡い期待が胸を過ぎる。
「そうだね、今でも精霊の存在を信じている人が多いかな。まぁ、厳密にいうとこの国ではないんだけど。さ、食事が冷める前に食べようか」
(あら? 話してはくれないのかしら)
 いつもなら、エレインたちが聞いたことに対して、色々な情報を教えてくれるアランが話を逸らしたような気がしてエレインは内心で首をひねる。
(できれば詳しく聞きたかったわ……)
 けれども、これからしばらくはこの国で生活することになっているのだから、この先にいくらでも機会があるだろう。
 すぐにアランが新しい話題を話し出したので、夢中になって耳を傾けた。
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