用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「ですが、おそらく当分は王都付近でなにかをするのは無理な気もしていたので……。お世話になった人たちには、違う形で返していければなと思っています」
ようやく自由になれたのだ。その機会はきっとこの先いくらでもある。
エレインはそう考えていた。
「そうか……。では、どうしてここに?」
「この木の側にいると安心できるというか……とても落ち着くんです」
(ふわふわさんたちがたくさんいるから、賑やかで好き)
「私にとって、実家の温室が母との思い出の場所なんですが、その中でもこの木は特別なんです。母がひと際大切に育てていた木でもあるので、思い入れもあって……。今日はなんとなく、母を近くに感じたくてここに……」
「エレインの母君は、どんな人だった?」
訊かれて、笑った母の顔が浮かび上がる。
「温室のように、穏やかで温かい人でした」
こんな風に誰かに母のことを訊かれたのも、話すのも初めてのことで、エレインはゆっくりと言葉を紡いでいく。
「唯一、私に愛をくれた人です」
(父から邪険にされて辛いはずなのに、いつも明るく笑顔で私に接してくれていた……)
母の強さは、年を重ねるごとに色濃くなっていく。
できることならば思い出にはしたくなかった。
エレインにとってかけがえのない母との時間を一つひとつ手繰り寄せるように形をなぞれば、温かさと共にひんやりとした寂しさが込み上げてきて、鼻の奥がツンとする。
「とても素敵な人だね」
「はい……ありがとうございます」
意図してのことではないのかもしれないけれども、アランが母のことを過去形にしなかったことが、その思いやりが温かく胸に染みる。
(夜でよかった……)
涙で濡れた瞳に気づかれずに済んで。
涙がこぼれないように空を仰いで、まばたきをして涙を散らす。
エレインの涙に気づいたのか、精霊たちはよく晴れた夜空を彩るように宙を舞った。
ようやく自由になれたのだ。その機会はきっとこの先いくらでもある。
エレインはそう考えていた。
「そうか……。では、どうしてここに?」
「この木の側にいると安心できるというか……とても落ち着くんです」
(ふわふわさんたちがたくさんいるから、賑やかで好き)
「私にとって、実家の温室が母との思い出の場所なんですが、その中でもこの木は特別なんです。母がひと際大切に育てていた木でもあるので、思い入れもあって……。今日はなんとなく、母を近くに感じたくてここに……」
「エレインの母君は、どんな人だった?」
訊かれて、笑った母の顔が浮かび上がる。
「温室のように、穏やかで温かい人でした」
こんな風に誰かに母のことを訊かれたのも、話すのも初めてのことで、エレインはゆっくりと言葉を紡いでいく。
「唯一、私に愛をくれた人です」
(父から邪険にされて辛いはずなのに、いつも明るく笑顔で私に接してくれていた……)
母の強さは、年を重ねるごとに色濃くなっていく。
できることならば思い出にはしたくなかった。
エレインにとってかけがえのない母との時間を一つひとつ手繰り寄せるように形をなぞれば、温かさと共にひんやりとした寂しさが込み上げてきて、鼻の奥がツンとする。
「とても素敵な人だね」
「はい……ありがとうございます」
意図してのことではないのかもしれないけれども、アランが母のことを過去形にしなかったことが、その思いやりが温かく胸に染みる。
(夜でよかった……)
涙で濡れた瞳に気づかれずに済んで。
涙がこぼれないように空を仰いで、まばたきをして涙を散らす。
エレインの涙に気づいたのか、精霊たちはよく晴れた夜空を彩るように宙を舞った。