用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「テオ、痛い」
「あ、テオドールさま! 見てください! このクッキー、くまさんの形をしていますよ」
「あう?」
 エレインがそう言えば、テオの意識がクッキーに向けられる。
 問題行為を注意するのではなく、意識をほかのことに逸らす方が効果的だということは、教会の子どもたちの面倒を見ていた人たちに教わった。
 まさか、それがこんなところで役に立つ日が来るとは、思いもしなかったけれど。
 ちらっと隣を見ると、アランが「ありがとう」と声に出さずに口を動かしたので、微笑んで謝意を受け取る。
「ほかにもいろんな形がありますね。テオドールさまはどれがお好きですか? どれもかわいくて食べるのがもったいないですね」
「むー」
 一連のやりとりを見ていた陛下の高笑いが場に響く。
「はっはっはっはっは! きみはすごいな、エレイン。テオもアランもすっかりきみに骨抜きだ」
「ほ、骨抜きだなんて……そんなことは断じて……」
「あぁもう、これだから父上には会わせたくなかったんですよ」
 心底嫌そうに眉間にしわを寄せたアランを見て、エレインから笑いが零れる。
 いつも穏やかで大人びた態度のアランが、陛下の前では「子ども」になってしまう意外な一面を知れて嬉しくなった。

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