用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 リゼットは、エレインがハーブを事業化するよりもっと前に、エレインのハーブを評価してくれたラングロワ伯爵夫人で、ヘルナミス国の市場でも三大商会の一つに名を連ねるデルマス商会の会長を努めるやり手だった。
 定期的にエレインのハーブを買ってくれており、量産するならいつでも自分が販路を整えるから、と言っていてくれたのだが、事業化の際には全ての決定権が父にあり、結果としてリゼットと契約できなかった。
 にもかかわらず、エレインとの交友を持ち続けてなにかと気にかけてくれ、境遇も知った上で「なにかあればいつでも私を頼っておいで」と温かい言葉をかけてくれた、家族よりも温かい人だ。
 婚約破棄され勘当されたときも、どうにもいかなくなったら頼らせてもらおうと、一番に浮かんだ人でもある。
 まさかこんなにも心配してくれていたなんて。
(そんな人に不義理をしてしまって、私は大馬鹿だわ……)
 己の不甲斐なさにエレインは恥じ入った。
「便りを出さずに申し訳ありませんでした……」
「エレインが元気でやっているならそれでいいのよ。あぁ、よかった。それに、ロズリーヌのところにいるならなにより安心できるわ。あのクズ男たちと縁が切れて私は心底ほっとしてるんだから! ……でも、なんだか顔色がよくないわね? また無理してるんじゃないでしょうね?」
 痛いところを突かれて、エレインはたじろぐ。
 ここのところの無理が祟り、正直体力は限界に近かったが、どうにか踏ん張っているところだった。
 顔色と隈も化粧で誤魔化しているのだが、隠しきれていないのかもしれない。
 挨拶を済ませた二人は、お互いに着席して微笑みあう。
「大丈夫です。陛下たちにはとても良くして頂いていますから。それより、リゼット夫人が王妃殿下と懇意にされているとは知りませんでした。デルマス商会はカムリセラ国の王室とも太いつながりがあるのですね」
 感心して言うと、ロズリーヌが「同郷なのよ」と笑う。
「もともとこっちの生まれだったのが、縁あってヘルナミス国に嫁いだの。ここ数年は商会が忙しくてロズリーヌとも疎遠だったけれど……――と、身の上話はこの辺にしておきましょう」
 リゼットは姿勢を正し、急に真面目な表情になると驚くべき言葉を口にした。
「今日はね、エレインにデルマス商会の代表として、仕事の話をしにきたの――」
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