用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 アランも子どものころから母を通してリゼットと交流があり、リゼットは昔からアランたち兄弟を自分の子どものように可愛がってくれていたらしい。
 エレインがリゼットと出会ってから数年が経つが、カムリセラ国の王族と交流があると聞いたことなどなかったため驚きだ。
 エレインの知る貴族は、誰誰と知り合いだ、やれ売れっ子のピアニストを招いてサロンを開いただの、パーティーに招待されたなど、とにかく交友関係を見せびらかしたがる。
 それに比べて、伯爵夫人でもあるリゼットの口から自慢話など聞いたことがなかった。
 いつも、エレインの境遇を心配して、冗談交じりに「うちに養子にきなさいよ」と声をかけてくれた。
 あの頃は、リゼットの優しさすらも社交辞令だと、素直に受け取れなかったほど自分は外とのつながりを無意識のうちに拒絶してしまっていたのだなと、今さらになって気付いた。
「薬の話、引き受けたんだろう?」
 エレインは、少しでも彼女に恩返しがしたい一心で、昨日のことを二つ返事で快諾したのだった。
 そのことをアランには、今夜、テオが寝た後にでも話そうかと思っていたエレインは、深々と頭を下げる。
「勝手に話をお引き受けして申し訳ありません。もちろん、テオドールさまのことを最優先にし、手を抜くようなことはいたしませんので……」
「そこが心配なんだけどな……」
「こ、これまで以上に頑張りますので、どうかお許しいただけないでしょうか」
 エレインは、必死な思いでアランを見上げた。
(やっぱり良い気はしないわよね……)
 反対されるだろうとは思っていたが、アランの信用を得られていないことに気落ちする。
 しかし、アランは「そうじゃなくて」とエレインを見た。
「テオや薬を疎かにするとは欠片も疑っていない。俺は、きみがこれ以上働き過ぎることを心配しているんだよ」
(私の心配を……? 契約ではなく?)
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