用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 そう考えただけで、体から血の気が引いていくような、足元の地面がガラガラと音を立てて崩れていくような、恐怖にも似た不安に駆られた。
(会えなくなるなんて、そんなの嫌……)
 三か月と少し、王宮(ここ)での生活は、エレインにとって大切なものになっていた。
 温かなアランと可愛らしいテオ、信頼してくれる国王陛下夫妻とリゼット、それにずっと支えてくれているニコル。
 そして、慈愛に満ちた眼差しで接してくれるアランとの時間を失うと思うと、胸を切り裂かれるような痛みに襲われた。
 優しい人たちに囲まれたこの世界を、失いたくない。
(けど……、それは無理な話ね……)
 これまで、エレインは自分でも人の役に立てることがあるのなら、その力を惜しみなく使ってきた。
 それは一重に、誰かの役に立つことで、「こんな自分でも誰かに必要とされている」という自身の存在価値をそこに見出し、求めていたからだ。
 アランからテオの治療をお願いされて引き受けたのも、最初は役に立ちたいという思いだけだった。
(私が人から必要とされるのは、この力があるから……。この力が必要なくなれば、()はもう必要がない用済みだもの……)
 いつかは別れがくるのだと、少し前から言い聞かせていたのに、それが現実味を帯びた途端に自分の覚悟などあっけなく砕かれた。
「エレイン?」
「おなかいたいの?」
「あ……すみません、ぼうっとしてしまいました。さぁ、お昼ご飯を頂きましょう」
 自分勝手な願いと痛いと悲鳴を上げる心を隠すように、エレインは笑顔を浮かべた。
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