用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「俺だって、この立場でなければとっくに伝えている」
 隣国の王子であり、ましてや契約まで交わしている自分から想いを告げられたら、エレインは立場的にも断れないだろう。
 仕方なしに受け入れられても、それはまったく嬉しくないどころかアランにとっては悲しく感じるだろう。
(こんなにも自分の立場が恨めしいと思ったことはないかもな……)
 これまでなに不自由なく育ってきたアランにとって、まさか自分の肩書が足かせになる日が来るとは思いもしなかった。
「俺なら誰かに取られるくらいなら、立場でもなんでも使いますけど」
 セルジュは立ったまま冷たい目でアランを見下ろしていた。
「俺は……肩書ではなく、ただの俺を好きになってほしいんだ……」
 もちろん、今だってエレインが自分を「王子」として見ているとは感じていない。
 彼女は、どんな時も「人」として向き合ってくれている。
 それはアランに限ったことではない。テオもニコルもセルジュもエクトルも、誰であろうと一人の人として尊重し、思い遣って接している。
 その彼女の誠実な姿勢は、見ていて心が洗われるようだった。
(決して、無理強いだけはしたくない)
 所詮綺麗ごとだと笑われるのは関の山だが、そこだけは譲れないものがあった。
「ならもっとストレートに愛情表現するべきです。さっきも、あんな風に『大切な人』なんて匂わせたところで、エレインさまはきっと『まぁ!殿下には大切な方がいらっしゃるのね!』くらいに思って終わりですよ。このヘタレ王子が」
「口が過ぎるぞセルジュ。……それにエレインはそんな下品な喋り方じゃない」
「はいはい、そうですね、失礼しました。ボケっとしてる間に、エクトル辺りにさーっと奪われたって知りませんからね。エクトルとハーブの話題で盛り上がってるエレインさまはそれはそれは楽しそうでいらっしゃいましたし」
 懸念していたことを言われ、アランは「ぐ」と押し黙る。
 本当にこの乳兄弟は容赦がない。
(まぁ、そこがセルジュの良いところでもあるのだが……いやしかしそれにしても、主の扱いが酷い)
「とにかく、エクトルにこのハーブティーと入浴剤を今日中に作っておくように伝えておいてくれ。今日、夕食の後にエレインに飲んでもらおう」
「……かしこまりました」
 まだなにか言いたそうなセルジュを手で払って追い出して、アランは残りの仕事にとりかかった。

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