ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
プロローグ
 焼け焦げた匂いが鼻を刺す。

 空は今にも泣き出しそうな曇天だ。

 それはあちこちから立ちのぼる煙のせいなのか、それとも嵐が近づいているからなのか――アリアには分からなかった。

 倒れた大理石の柱の向こうで、何かが壊される音がした。
 振り向くと、城の扉や窓が破壊されている。中に残っている人間がいないか探しているのだろう。

 群衆から次々に上がる怒号。
 遠くでかすかに聞こえる悲鳴。
 地面にこびりついた血の跡。

 フェルディア王国の最期は、いつだってこんなふうに悲惨だ。

 「結局また、守れなかったんだ……」

 何もできなかった、という思いが胸を締めつける。

 王宮になだれ込んだ市民たちによって作られた処刑台の上。
 そこから燃える王都を見下ろしながら自嘲するように笑うと、乾いた喉がひりついた。

 (……この光景、何度目だったっけ……?)

 ──四度目。

 アリアは何度もこの人生をループしている。
 そのたびにどれだけ手を尽くしても、どれだけこの未来を回避したいと願っても。

 また、ここにたどり着いてしまった。

 かつてあれほど慕われていたミカエル王太子殿下が、今や『血の暴君』と恐れられ民衆から怒りの矛先を向けられている。

 きっかけはたった一つの不幸。
 殿下の婚約者であるエレナ・クラヴィスが、命を落としたこと。

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