ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 そんな話は聞いていない。
 思わず聞き返した私に、女官はあっさりと頷く。

「そうそう、セドリック・グレイヴナー第一宰相。前の宰相がおととい倒れたでしょ?それで着任してこれから陛下に謁見に来られるってことで、さっきからみんなてんやわんやよ」

「……セドリック……グレイヴナー?」

 小さな声で繰り返したその名前に、聞き覚えはなかった。
 見慣れていた舞台に見知らぬ役者が現れたことに、アリアは混乱する。

(ちょ、ちょっと待って、セドリックって誰?新キャラ!?ループ五回目にして!?)

 「何でもすごい優秀な方らしいわよ?建国以来史上最年少の宰相なんだって」

 ティーセットよりも衝撃的な出来事に、思わずアリアは硬直した。

 この王政の中枢である宰相の座は、過去四回とも白髪白髭で老齢の男性だった。あの人がまさか、この世界ではおととい倒れてしまっている?


 確かに、時間が経過するにつれて過去のループと違う展開になっていくことはあった。

 でもそれは、アリア自身がエレナを守るための行動をとったがゆえに起きた変化であって、こんなループの初めから違う展開になるのは初めてだった。


「そんな……まさか、今回は……何かが違う……?」


 王宮の風が、ほんの少しだけざわついている気がした。


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