ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 脳内で想像しただけで煙が出そうだ。
 うろたえるアリアを楽しげに見下ろしながら、セドリックはじわりと追い詰めるように続ける。

「宰相閣下からの贈り物に対する礼を拒むのか?そのほうがよっぽど不敬だと思うが」

「っ……!」

 ぐさりと刺さる理屈に言葉を詰まらせる。

「それとも、君は俺の名前すら覚えていないのか?」

「覚えています!!覚えていますけどっ……!」

「じゃあ呼んでみろ」

 低く、静かな命令。
 この距離、この空気、この沈黙――逃げ道なんてどこにもない。
 アリアは顔を真っ赤にしながら、意を決したようにぎゅっと拳を握る。

「……セ、セド……リック、さま……」

 ぽつりと蚊の鳴くような小さな声で、名前を呼ぶ。

 その瞬間だった。
 目の前のセドリックが、言葉を失ったように動きを止めた。

「…………」

 いつも冷静なはずの蒼玉の瞳が、揺れたように見えた。驚いたような戸惑ったような、でも痛いほど優しい光を宿している。

「……?」

 あまりに長い沈黙に不安になって、セドリックを見上げる。

「えっ……あの、どうかしましたか……?」

 その問いかけに、セドリックは少しだけ視線を逸らしてから低く息をついた。

「……なるほど、これが尊い、という感覚か」

「はい…??」

 ぽかんとするアリアに、セドリックはそれ以上何も言わず、ただ小さく笑った。

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