ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
宰相席にはセドリックがいた。
しかし、普段なら規則的に動いている羽ペンの音も、書類をめくる気配もない。
彼はただ静かに、窓の外を見ていた。
淡い銀の月明かりを背に、冷めた紅茶を前に置いたままで。
(……やれやれ)
ライナスは心の中で深く嘆息した。
彼が部屋に入ってきた人間の気配にすら気づかずにただじっと物思いにふけるなど、これまでにはあり得なかったことだ。
(この人は、たった一人でこの国を影から支えている)
その合理性も冷静さも、すべては国を揺るがせないための手段。
だからこそ、近頃のセドリックの変化に、ライナスは気づかないふりなどできなかった。
ふとした瞬間に、手が止まることが増えたこと。
意識が目の前の仕事ではなく、ここにはいない誰かに向いていること。
――今日一日、たった一人のメイドを傍に置き視察に同行させたこと。
それがどれほど異例で、どれほど彼らしくない行動だったか。
荷物持ちをさせる従者など変わりはいくらでもいる。どれだけもっともらしい理由付けをしたところで、わざわざ彼女を選んで連れ歩く理由など、一つしかないというのに。
(当の本人だけが、自分の変化に気づいていない)
誰よりも合理的かつ冷徹であろうとする男が、いつの間にか誰か一人の存在を心のどこかに置くようになっている。
しかし、普段なら規則的に動いている羽ペンの音も、書類をめくる気配もない。
彼はただ静かに、窓の外を見ていた。
淡い銀の月明かりを背に、冷めた紅茶を前に置いたままで。
(……やれやれ)
ライナスは心の中で深く嘆息した。
彼が部屋に入ってきた人間の気配にすら気づかずにただじっと物思いにふけるなど、これまでにはあり得なかったことだ。
(この人は、たった一人でこの国を影から支えている)
その合理性も冷静さも、すべては国を揺るがせないための手段。
だからこそ、近頃のセドリックの変化に、ライナスは気づかないふりなどできなかった。
ふとした瞬間に、手が止まることが増えたこと。
意識が目の前の仕事ではなく、ここにはいない誰かに向いていること。
――今日一日、たった一人のメイドを傍に置き視察に同行させたこと。
それがどれほど異例で、どれほど彼らしくない行動だったか。
荷物持ちをさせる従者など変わりはいくらでもいる。どれだけもっともらしい理由付けをしたところで、わざわざ彼女を選んで連れ歩く理由など、一つしかないというのに。
(当の本人だけが、自分の変化に気づいていない)
誰よりも合理的かつ冷徹であろうとする男が、いつの間にか誰か一人の存在を心のどこかに置くようになっている。