ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 埃をかぶった古い資料から、セドリックとともに掘り起こした真実。
 歴史の影に葬られていたかつて王国を揺るがした告発の記録を、自分たちは見た。

 クラヴィス家の前当主――エレナの祖父による告発状。
 ルガード家が西部の山岳地帯で行っていたこと。
 そして下された裁定結果もすべて。なのに――

(存在しない、なんて……)

 それが真実だと言わんばかりの断言に、アリアはぞくりと背筋が粟立つのを感じた。

「なるほど……初めから筋書きは決まっているというわけだな」

 セドリックはゆっくりと口の端を持ち上げて、鼻で短く笑った。
 監察局長の顔が、一層険しさを増す。

「貴殿は、この国が選択した過去を暴こうとした。その時点で王政の秩序に背いたと見なされる。よって王政の転覆を意図した動きと断じられる」

「違います……っ!!」

 アリアは前へと飛び出した。

「確かに記録を見たんです!五十年前の封印された資料を!私たちはただ偽造硬貨の出所を調べるために、紋章を調べようとしただけで……国家転覆なんてそんなつもりは――!」

 感情が崩れそうになるのを押しとどめながらも、必死に叫ぶ。
 けれど、アリアの訴えも届かなかった。

「君もだ、アリア・セルフィア」

 観察局長は冷たく言い放った。

「君はクラヴィス嬢付きのメイドだったな。クラヴィス嬢と結託していたとしても不思議ではない」

 アリアの全身から血の気が引く。

「…っ違います!そんなことは…!」

「何より第一宰相と行動を共にし、王国の過去を暴こうとした。身分の如何(いかん)を問わず君も処罰の対象だ」

 なおも言い連ねようとしたが、それはかなわなかった。背後に控えていた屈強な近衛兵たちがアリアの腕を掴み拘束したからだ。
 そのまま体を押さえつけられ、手首に拘束具を嵌められようとしたとき――


「……やめろ。彼女は何も知らない」


 セドリックの声が、大広間に響いた。

 その声は低くどこまでも静かで、それでいて凛としていた。

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