ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
29.逆転の芽
 ライナスは静かに、手にした書類の束をアリアに差し出した。

「これが……全部、ルガード家の……?」

 アリアは、そっと一冊の古文書を両手で受け取った。
 黄ばんだ羊皮紙、封蝋の跡、そして表紙に押された古い紋章。視線がそこに吸い寄せられる。

「アリア嬢。これは、私たちにとって逆転の芽になり得ます」

「え……?」

 真剣な眼差しでライナスが言った。

「今、クラヴィス嬢はマルタユ帝国と内通して偽造通貨を作り、国家転覆を狙っていたとされています。しかし、今回の陰謀すべてが五十年前から続く『ルガード家の計画の一部』だと証明できれば、この敵側の筋書きは成り立たなくなる」

 アリアは、はっと息をのむ。

「ルガード家の計画が今も生きていることが分かれば、それを暴こうとしたセドリック様に着せられてる罪も…!」

「ええ。国家反逆どころか、閣下は真実を明らかにしようとしたことの証明にもなります」

 アリアの言葉に、ライナスは大きく頷いた。

「今回の一連の罠を仕掛けた者の意図が明確になれば『王政転覆の計画』がクラヴィス家のものでないと証明できるでしょう。審問会に間に合えば希望はあります」

 アリアはぐっと拳を握った。

 エレナとセドリック、二人を助けることができる。
 そう思うと、アリアの胸はドクドクと高鳴った。

 それと同時に、さっきからずっと引っかかっていた感覚が、はっきりと輪郭を持ち始める。

(この紋章……やっぱりどこかで見た。毒針ブローチのカードに刻まれていたあの紋章と、同じ……)

 アリアは無意識に資料を持つ手に力が入る。
 頭の奥で、遠い記憶がかすかに鳴った。

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