ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
「どうしました?」

「この紋章、見たことがあるんです。でも、それがどこでだったかずっと思い出せなくて……」

「君の最初の配属は洗濯場でしたね。その後は配膳室を経てから倉庫管理でしたか」

 ライナスはふと懐かしげに微笑んだ。

「よく覚えてますね」

「閣下の命令で、人事局から君の資料を取り寄せましたからね」

 くすりと笑いながら、片眼鏡(モノクル)がきらりと光る。

(倉庫……)

 アリアの胸に、どくんと心臓の音が響いた。

 自分のループの起点はいつも、エレナ嬢の部屋付きに任命された日。

 けれど、その最初のループが始まる前。
 王宮で勤め始めて三年目のとき、自分は王宮倉庫の担当をしていた。

 あのころの記憶は、何度もループを重ねるうちにぼやけてしまって、忘れかけていたけれど――

 まだ王宮の構造も、人間関係も、何ひとつ知らなかったころ。
 雑用と整理に明け暮れていた日々。
 薄暗い倉庫でひたすら棚卸ししていた、あの時間。

 そのとき――偶然、開けてしまったのだ。
 棚の隅で忘れられたように、まるで誰も触れたがらないような不気味さを纏った木箱を。

 鍵は錆びついていて、蓋は重たかった。
 長年降り積もった埃を払って、蓋をそっと開けたとき。

(そう……蓋の裏に、焼きごてで押したように刻まれていた紋章があった……)

 その記憶が鮮やかに蘇った瞬間、パチンと何かが弾けた。


(……思い出した……!あの紋章が『ルガード家』の紋章だったんだ!)


 どうして今まで思い出せなかったんだろう。
 でも、記憶がよみがえった今なら、そのときの光景も不気味なほど静かな空気さえも、ありありと思い出せた。

「ライナスさん……」

 アリアの声が震える。ようやく一つの線として繋がり始めていた。

「王宮の南にある物品保管庫は、今も残ってますか……?」


< 142 / 167 >

この作品をシェア

pagetop